音楽の行方

蓄音機の発明によって
音楽に最初の変化が起きた。

ライブである必要がなくなった。
時間を封じ込めることに成功したのだ。

しかし、それでも、
音楽は、人の周りの空気を震わせていた。
複数の人で
その音を共有することができた。

時代は進み
ヘッドフォンが発明されたりしたが
音楽は、ライブではないけれど
決まった場所で聞く必要があった。

しかし、
ウォークマンが発明されると
音が空気を震わせることはなくなった。

場所はどこでもよくなり
ただ一人の耳の中
鼓膜の近くの
わずかな空気だけを
震わせるようになってしまった。

他の人が共有できるのは
シャカシャカと漏れ聞こえる
耳障りな音だけだ。

好むと好まざるとに関わらず
音楽を共有する場を、
人は失っていった。

音楽はただ、ただ
消費されるようになった。
特別なものではなくなってしまった。

それは、本当に音楽なんだろうか?

街中で、周りを見ると
歩きながら、
座ったまま
自転車に乗りながら
鼓膜近くの
わずかな空気を震わせている人たちで
あふれかえっている。

そんなに独りに
なりたいのか?
そこまでして聴きたい
音とは何なんだろうか?

ライブというものが
人からどんどん
遠ざかっているように思えてならない。

そんなことを
最近考えた。