兄弟

北海道での演奏旅行も終わり
知床で1泊し
旭川へ来るまで向かう途中
休憩に立ち寄ったコンビニでの出来事。

ずいぶんな距離を走ってきたのもあって
少し小休止しようと
コンビニに立ち寄った。

道路を挟んだ反対側の林の向こうには
能取湖が広がっていようかという場所。

道路際に行き
今まで走ってきた方角を
ぼんやり見ていた。

するとずいぶん向こうから
自転車に乗った兄弟とおぼしき
二人の男の子が
ゆっくりとこちらへ向かってくる。

弟の方は
補助輪なしの自転車には慣れていないらしく
乗ってはこけしながら
少しずつ近づいてくる。

お兄ちゃんの方は
ずいぶん達者なようで
途中から弟をほったらかして
僕の近くまでやってきた。

その男の子に声をかけると
やはり、お兄ちゃんで(ふくざわじんせいくん)
自転車がおぼつかない彼は
弟とのことだった(ふくざわだいとくん)。

ようやくコンビニの駐車場まで
たどり着いて
練習を始めたけれど
どうも、うまくいかない。

補助輪を外して間もないんだろうか?

少し彼らとも
うち解けてきた。
お兄ちゃん曰く
まだ、弟は慣れていないとのこと。

弟が、意を決して
さぁと言う感じで
走り出そうとしていたので
そばに寄って
一言言った。

「ええか、
近く見いひんと
遠く見て走ってみ」

すると彼は
すっと視線を上げ
ペダルを踏んだ。

これまで
こけてばかりだったのが
嘘のように
自転車はすーっと
走っていった。

ちょっと感動してしまった。

が、いかんせん、
すーっと走ったのが
初めてである。

走ることに心を奪われたのか
ブレーキを忘れ
あえなく駐車場の
柵に激突。

「こんどはちゃんとブレーキかけや(笑)」

彼が自転車に乗れて
うれしかったのかどうかは
分からないけれど
そばによって
そう、声をかけた時
彼は、そのことより
蚊にかまれた手の甲の
かゆさ方が気になっていたようだった。