越えられない壁 「TOPDOG/UNDERDOG」

久々の観劇。
堤真一さんと千葉哲也さんの二人芝居。

両親に捨てられ
社会の底辺で肩寄せ合って生きてきた
黒人の兄弟が主人公。

アメリカで作られたお芝居のようで、
それを翻訳して、
今回の舞台にしたようだ。

パンフレットの写真にもあったが、
本来は黒人の俳優さんによる二人芝居だ。

主人公の名前(兄リンカーンと弟ブース)からし
風刺が効いている。
キーになるトランプカードによるイカサマで、
「黒で勝ち、赤で負け」も、
絶対黒は負けではない。
原作は知らないけれど、きっと
Black win! Red lose!
ていうセリフか。
違うかもしれないけど"Red"は、白人じゃないかな。
顔赤いし、日本でも赤鬼は漂着した白人という話もあるし。

兄のリンカーンは、顔を白く塗り、
遊園地で、リンカーン役をやり、
暗殺されるふりをする仕事を一日やっている。

もう、めまいがする程に背景はブラック一色なわけだ。

お二人の熱演は素晴らしく、
後半、両親を思い出す回想シーンでは
確実に黒人の子供の二人とその両親の顔が
浮かぶほどだ。
演じている二人も、黒人に見える瞬間もあった。

しかし・・・・。
二人の顔が黒人に見えた瞬間、
あ、でも日本人だという気付きに引っ張られる。
特に堤真一さんは、テレビ好き、映画好きの自分としては
そっちのイメージがあまりにも強い。

黒人←→やっぱり日本人
の振れ幅で、かなり疲れてしまった。

この芝居は、ある意味
黒人の俳優さんが羽織袴で
時代劇、もしくは歌舞伎を演じるほどに
チャレンジングな舞台とも言えるわけで、
黒人社会が抱える悲壮感のようなものを
日本人が演じるのはかなり難しいことだと思う。

機関銃のような二人のやり取りの中で
芝居の背景が明らかになっていくんだけれど、
日本人の口から、それが語られる違和感が
時折浮かんでは消え、
やはり振り幅が大きいのだ。

越えられない壁なんだろうか。
キャストなんだろうか、
脚本、演出、う〜ん。

勝手にキャスティングするなら
兄のリンカーン大泉洋さん
弟のブースにTOKIO長瀬智也さん
でやれば、笑いとシリアスで
ラストがグッと来たような気がする。

ともあれ、別のキャストで見てみたいし、
オリジナルも見てみたい気もする。