つながる面白さ


会計の世界史

この本を読んでいて、惣領 冬実のチェーザレ(漫画)

と突然リンクしてゾクッと来た。
サヴォナローラの名前が出てきて、
漫画の絵がブワッと浮かんできたのだ。

イタリアの章で、メディチ家が取り上げられていて、
ロレンツォ・デ・メディチは、会計的には
先代には及ばず、メディチ家の滅亡を招いたようだ。

漫画の方では政治的な立ち位置として、
イタリアの安定の要として描かれていた。
どんな重要人物でも、その生活の背景には
会計があるわけで、興味は尽きない。

3年ほど前に「帳簿の世界史」

を読んでいた時も、ロレンツォ・デ・メディチは出てきたけれど、
読ませ方としては、今回読んだ「会計の世界史」の方が
面白いと感じた。

今の会計システムの歴史が意外と新しいことや、
数々のトラブルを乗り越えるたびに、
新しい社会インフラが発明されるたびに
新しい会計システムが発明されていった過程が
上手くまとめられていて、
非常に興味深く読んだ。

仕組みを構築し、牛耳ることの重要性は
この本を読むとよくわかる。
(良い悪いは置いておいて)

こういう出会いがあるので
読書もやめられない。
散財は続くよどこまでも。

匿名性とセキュリティと

闇(ダーク)ウェブ

これを読もうと思ったきっかけはこの殺人事件


この書籍の著者の一人だったようだ。

ほぼ知らなかったことばかり。
ネット上にそういう世界があるのかという驚きと
ああ、でも存在するかという納得が
ないまぜになった心持になる。

違法な商品、情報が、
安全に信頼性がある状態で取引されている
というのが、一瞬引っかかったが、
かつては、危ない場所に行かないと手に入らないものが、
安全な場所から信頼に足る(?)人間から
注文出来て届くというのは、
なるほどと思いながら、それでいいのか?という疑問も生じる。

読んでいて、終始こんな感じだ。

結局、セキュリティ強化は必要だが
情報を盗まれるときは盗まれる。

それが闇ウェブで取引されている。
技術革新も日進月歩。

ただ、技術そのものが悪かと問われれば、
決してそうではなく、
言論の自由などが制限されている国や地域の人々にとっては、
監視を免れ素性が探られにくい、闇ウェブは
必要なものなのだ。

道具としての技術は、あくまで中立。
それ自身に悪はない。

結局は使う人間次第という、
至極当たり前の結論にいたる。

ネット社会は便利だが、同時に
神のごとき力を人間に与えてしまう。

あらゆるものがネットにつながると便利だけれど、
その危険性はどこまで認識されているのかなあ
とこの本を読んで改めて考えてしまった。

なので、自宅にはIoTの機器は
AmazonEchoぐらいで、そのカメラは付箋で塞いである。
冷蔵庫や空調、洗濯機をネットにつなぐ気にはなれないなぁ。

帝国主義は形を変えて今も生きている

日本が売られる 堤未果

今から100年と少し前までは、
武力と科学技術を背景に、
目に見える形で、世界は切り取られ、
力あるものが利益を独占していた。
中心を担ったのはヨーロッパ諸国であり、
帝政ロシアであり、
新興国アメリカであり、
敗戦を迎えるまでの日本だった。

今は、
法と、健全な企業活動に見せかけ、
途上国に対するインフラ整備を隠れ蓑に
「今だけ、カネだけ、自分だけ」を推進力に
見えない帝国主義によって
世界は再び、切り取られ、
力ある多国籍企業によって、
遅れてきた帝国主義国の中国によって
利益が独占されつつある。

このまま、どこかのSFで見た
ディストピアが具現化するのか、
それとも違った未来がやってくるのか。

未来から見たとき、その歴史のただなかが
今ですよ、と警告を発した本。

なかなか読み進めるのには
ストレスを感じてしまうけれど、
今読むべき本だと思う。

お金の話、マスメディアが造り上げた虚像に対する誤解

いま君に伝えたいお金の話 村上世彰

恥ずかしながら、
かつてこの著者、村上世彰氏に対する印象は
良くなかった。

完全にマスメディアが造り上げたものに
踊らされていた。

その後、氏が監修した「マネーという名の犬 12歳からの「お金」入門」を読んで
印象を改めた。

この本と「いま君に伝えたいお金の話」は
子供たちに向けられたメッセージだ。
もちろん、僕みたいなオッサンが読んでもOKだろう。

普段避けがちな「お金」のことについて
丁寧に解説されている。

懸念するとしたら、氏が読んでほしい
子供たちが手に取るかどうかということだ。

これを読ませようとする親なら、
その子供は、ある水準以上の家庭にいると考えられる。
だが、村上氏が読んでほしいのは、
これを読ませる発想すらない親の元にいる
子供たちではないか
と思ってしまう。

小学校、中学校、高校の図書館にあるといいなぁ。
もちろん大学も。

子供たちがこの本に出合うといいな
とオッサンは思った。

フィクションの難しさ

教誨師 堀川 惠子著

何年か前に読んだなぁと思いつつ、
単行本は部屋のどこかに埋もれているので、
文庫版を再度購入して読み直してみた。

きっかけは大杉漣さんが主演する映画を観たからだ。
うっすらした記憶で、たしか仏教系の教誨師だったのになと思った。
映画ではプロテスタントの牧師になっていた。

映画とこの本は関係がない。本はノンフィクションだからだ。
読み直してみて、やはり凄い内容で、
だからこそ映画に対して今一つな感覚になったのは
間違いなかったと確認した。

同時に、この教誨師をフィクションで描く難しさも感じる。

映画を観た方にも、見てない方にも
重い内容だけれど、読むのを勧めたい一冊でもある。

おそろしく手間のかかった本

日本国紀 百田 尚樹著

まず、これをまとめ上げた
百田氏の仕事に敬意を表したい。

歴史なので、諸説あるだろうが、
この書籍の意義は大きい。
特に近現代史は、この本の7章以降で
流れがつかめると思う。
本来は歴史学者の仕事なんだろうが、
それを望むのは難しいことは本書を読めばわかる。

なんだかいろいろ言っている筋(左)もあるようだが、
内容を見る限り、
偏った書き方にはなっていない。

この内容がどう見えるかが
ある種リトマス試験紙になっているんだろう。

この書籍をきっかけとして、
他の人が書いたものを読むことをお勧めする。

今は、廃刊になったものでも、
Amazonや、古本のネットワークで手に入る。
今、世界で起こっていることを見つめる上でも
若い世代に読んでほしい1冊。